秘密証書遺言
秘密証書遺言は、遺言書の内容を秘密にしたまま、遺言の効力を確保できる遺言形式です。遺言者が遺言内容を公にせずに、遺言書を作成する方法として利用されます。これは、遺言者が他の方法(自筆証書遺言や公正証書遺言)ではなく、あえて遺言の内容を秘密にしたい場合に選ばれる形式です。
以下に、秘密証書遺言の特徴、作成方法、メリット・デメリットを詳しく説明します。
秘密証書遺言の特徴
内容を秘密にできる
秘密証書遺言の最大の特徴は、遺言書の内容を他者に知られることなく作成できる点です。遺言者自身が内容を秘密にしたい場合に適しています。
公証人と証人が関与
秘密証書遺言には、遺言者が書いた遺言書を公証人に持ち込み、公証人に証明してもらう必要があります。また、証人2名も立ち会う必要があります。
遺言書を封印して提出
秘密証書遺言では、遺言書に書かれた内容は封印されたまま存在を証明してもらうため、公証人や証人にさえ遺言の内容を知られることはありません。
秘密証書遺言の作成手順
秘密証書遺言を作成するには、次の手順に従う必要があります。
(1) 遺言書の作成
- 遺言者は、遺言内容を手書きまたはパソコン・ワープロで記載しますが、遺言書の内容を他者に知られないよう、遺言自体を封印し、秘密にしておきます。
- 遺言書には必ず遺言者の署名押印と日付が必要です。内容は自分で決めることができます。
(2) 封印して公証人に提出
- 作成した遺言書を封筒に入れて封印します。この封筒の中身は他の誰にも知られることなく保管されます。
- 公証人にその封筒を持参し、証人2名を同席させて遺言書が存在していること、遺言者が遺言書を自分で作成したことを証明してもらいます。
(3) 公証人による証明
- 公証人は、遺言者が遺言書を自分で作成し、その内容を秘密にしていることを確認します。その後、遺言書の存在が証明され、証人2名と公証人の署名が記載された証明書が交付されます。
- 公証人がその存在を確認するため、遺言書の内容を開封することはありません。秘密が保たれます。
(4) 遺言書の保管
- 秘密証書遺言の保管方法については、遺言者が適切に管理することが必要です。遺言書自体が封印されているため、誰にも内容を知られることはありませんが、後に開封されるためには、家庭裁判所に提出し検認手続きを経ることが求められれます。
秘密証書遺言のメリット
遺言内容を秘密にできる
- 最も重要なメリットは、遺言内容を秘密にできる点です。遺言者は、遺言書の内容を他者に知られることなく、相続人や関係者に遺言内容を示すことができます。
- 公正証書遺言では作成の段階で内容が一部の人物(公証人や証人)に明らかになったり、自筆証書遺言では封をすることが絶対ではないため他人に見つかった場合に読まれてしまう場合があります。秘密証書遺言はそれを避けることができるため、遺言者が他の相続人に遺言内容を絶対に知られたくない場合に有用です。
公証人による証明
- 公証人と証人が立会い、封をした状態の遺言書の存在が公証役場で認められるため、すり替えによる偽造が起こりにくくなります。
家族や周囲に対する配慮
- 自筆証書遺言のように突然遺言書が発見されると驚きや混乱を招くことがありますが、秘密証書遺言は相続人であれば公証役場に遺言の有無を問い合わせることができます。相続発生後にあらかじめ遺言の存在を知っておくことができるため、煩雑な相続の手続きを行う上で手戻りを減らすことができます。
秘密証書遺言のデメリット
費用がかかる
- 公証人や証人が関与するため、秘密証書遺言を作成するには定額で11,000円の費用が発生します。また、証人の報酬が必要となる場合があります。
内容が秘密であるためのリスク
- 遺言内容が秘密にされているため、後に遺言書を発見する際、相続人や関係者がその内容を全く知らないという点で混乱が生じることがあります。また、公証人が内容の確認を行わないため、遺言書として法的に必要な形式を備えているかをチェックすることができません。
証人と公証人の立会いが必要
- 証人2名と公証人の立会いが必須であり、証人や公証人の手配が必要です。証人には信頼のできる人になってほしいと考えるのが通常ですが、身近な親族である推定相続人の方は証人になれません、条件に合う信頼できる承認を2人探して都合をつける必要があります。
保管の問題
- 秘密証書遺言は公正証書遺言のように公証役場で保管されないため、封印されたままで、安全に保管できる場所を自分で確保する必要があります。もし遺言書が紛失したり、破損した場合、遺言者の意志が正しく実行されないリスクがあります。
秘密証書遺言と他の遺言の比較
秘密証書遺言を作成する際の注意点
遺言書の内容が明確であること
秘密証書遺言も、他の遺言書と同様に遺言内容が明確でなければ、後で法的な問題が発生する可能性があります。特に遺産分割や特定の財産の指定については、曖昧な表現を避け、具体的に記載することが重要です。