遺言書が存在すると、被相続人の意思が法律的に優先されますが、それが相続放棄にどのような影響を与えるのかを正しく理解することが重要です。本記事では、遺言書がある場合の相続放棄に関する基礎知識を解説します。
遺言書は被相続人の意思を表したものであり、その内容が法律で定める法定相続分よりも優先されます。
例:遺言書に「財産のすべてを長男に相続させる」と記載されていれば、通常はその通りに財産が分配されます。
遺言書がある場合でも、相続人は相続放棄を選択できます。これは、被相続人の意思とは無関係に、相続人が自身の意思で相続権を放棄できるという民法の規定によるものです。
相続放棄を行うことで、遺言書に基づいて指定された相続内容が実行できなくなることがあります。
例:遺言書で「長男に全財産を相続させる」と指定されていた場合、長男が相続放棄をすると、財産は次順位の相続人や他の相続人に移ります。
一般的に、法定相続人以外に財産を残す場合、遺言書に「○○へ遺贈する」と記載します。遺贈とは、特定の財産を特定の人に与える行為であり、受遺者が相続人である必要はありません。よって、相続放棄をしても、遺言書に基づく「遺贈」には影響を与えません。
遺言書が存在する場合、遺言執行者が指定されていることが一般的です。遺言執行者は、遺言書の内容を実行する役割を持ちます。
遺言執行者は、放棄した相続人に代わる受益者を特定する必要があります。この際、次順位の相続人や他の受遺者との調整が必要になります。
遺言書で遺留分を侵害している可能性がある場合、遺言執行者は遺留分請求への対応も行います。ただし、相続放棄をした相続人には遺留分請求権がなくなるため、遺留分に関する争いには影響しません。
遺言書の存在を知らずに相続放棄をしてしまうと、後から遺言書が発見されても放棄を撤回することはできません。相続放棄を決断する前に、遺言書の有無を確認することが非常に重要です。
相続放棄をした後でも、被相続人の財産が適切に管理されるまでの間、相続人として一時的に管理義務を負うことがあります。この義務は、遺言書に指定された財産にも適用されます。
遺言書でプラスの財産だけが指定されている場合でも、負債が多ければ相続放棄が有効な選択となる場合があります。
遺言書の内容が不公平だと感じても、相続放棄によって解決するわけではありません。この場合、遺留分侵害額請求など、他の法的手段を検討する必要があります。
相続放棄は相続開始(被相続人が亡くなったことを知った日)から3か月以内に家庭裁判所で手続きする必要があります。遺言書の確認や専門家への相談もこの期間内に行うことが望ましいです。
遺言書がある場合の相続放棄は、通常の相続放棄よりも複雑になることがあります。司法書士や弁護士に相談することで、トラブルを未然に防ぐことができます。