相続放棄を行う上で、まず重要なのが相続財産の調査です。相続財産には、プラスの財産(預貯金や株式、不動産など)とマイナスの財産(借入金や未払い金など)が含まれます。ここでは、「預貯金の有無」「株式の有無」「不動産の有無」「借入の有無」の4つのポイントを、それぞれの具体的な調査方法を解説します。
故人が生前利用していた金融機関を把握することが第一歩です。
故人宛ての郵便物を調べ、銀行や信用金庫、ゆうちょ銀行からの通知や明細書がないかを確認します。これにより、利用していた金融機関がわかることがあります。
故人が保管していた通帳やキャッシュカードを確認し、利用していた金融機関を調査しましょう。ネットバンキングを利用していた場合は、ログイン情報が記録されている場合もあります。
利用していた金融機関が特定できた場合、相続人であることを証明する戸籍謄本、故人の死亡の記載のある戸籍謄本、相続人の印鑑登録証明書と実印、相続人の本人確認書類を持参して問い合わせることで、預貯金の残高証明書や取引明細を取得できます。(金融機関によって必要書類は異なることがあるので、事前に問い合わせて確認しましょう。)
故人が株式を保有していた場合、証券会社や株主名簿などを確認する必要があります。
株主総会の招集通知や配当金の支払い通知などの郵便物が残されていないか確認します。これにより、保有している株式や証券会社が判明します。
保有していた株が上場株の場合、証券保管振替機構(通称ほふり)を利用して調査を依頼する方法もあります。ほふりで開示請求手続きを行うことで、故人が口座を開いていた証券会社を特定することができます。
郵便物で調査した証券会社、また「ほふり」で調査した証券会社に問い合わせることで、保有株式の内容を調べることができます。通常戸籍謄本などの書類が必要です。証券会社に問い合わせて必要書類を確認しましょう。
故人が非上場会社の役員をしていた場合、非上場株式(非公開株式)を保有している可能性があります。非上場株式の場合、前項までの調査では把握できません。故人の保管していた書類の中に、「定款」や「株主名簿」という書類が見つかれば、その会社へ故人が株式を保有していたかを問い合わせましょう。
通常、不動産は相続財産の中で大きな比重を占めます。念入りに確認する必要があります。
故人の保管していた書類の中に、固定資産税の納税通知書や領収書がある場合、故人名義で登記されている不動産の所在を確認できます。
所有不動産が特定できたら、法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)を取得し、所有者名義や不動産の詳細を確認します。登記簿謄本の中の、権利部(乙区)に「抵当権設定」もしくは「根抵当権設定」と記載されていた場合、当該不動産を担保に債務を負っていることがわかります。(すでに債務は完済していて担保権登記だけが残っている可能性もあります。)
固定資産税の納税通知書が見当たらない場合、故人が持ってた可能性のある不動産が所在する市町村役場に問い合わせ、名寄帳(課税台帳)を確認することで、不動産の有無を調べられます。名寄帳には、故人が所有していたすべての不動産が記載されるため、故人が何らかの不動産を持っていたであろう場合は必ず取得しましょう。
借入金やローンの存在を確認することも重要です。
借入金に関する督促状や契約書が残されていないか確認します。また、クレジットカードの明細などからローンの存在が判明することもあります。
故人が取引していた金融機関が全国銀行個人情報信用センター(全銀協)に加盟している金融機関であった場合、全銀協へ登録情報開示を申し込むことで、契約内容と返済状況を知ることができます。
消費者金融など、銀行等以外からの借入を知りたい場合は、信用情報機関(CICやJICCなど)の情報開示制度を利用しましょう。注意したいのが、この開示制度では、信用情報機関にデータが残っている分だけしか判明しないため、古い債務は調べられないことがあります。
相続財産の調査を怠ると、相続放棄をすべきか否かの判断を誤ることに直結します。すべての財産を正確に把握するためにも、早めに調査を開始することが大切です。しかし財産調査の手続きは、書類を集めて何件も問合せをする必要があり、慣れていない方にとって非常に厄介な手続きといえます。必要に応じて専門家(司法書士や弁護士など)に相談することをおすすめします。