相続登記のための準備

相続登記に必要な準備を解説します。相続登記の手続きを円滑に進めるためには、いくつかの準備が必要です。以下に、遺言書の確認、相続人の特定、不動産の確認など、各ステップについて詳しく説明します。

1 遺言書の確認

相続登記の前に、被相続人が生前に作成した遺言書が存在するかを確認する必要があります。遺言書がある場合、その内容に基づいて相続登記を行わなければなりません。

  1. 遺品整理
    被相続人の遺品の中に自筆証書遺言が含まれていることがあります。自筆証書遺言が発見された場合、相続人は速やかにその原本を所轄の家庭裁判所に提出し、その「検認」を請求しなければなりません。
  2. 遺言書保管制度
    2020年より、法務局で自筆証書遺言を保管する制度が始まりました。被相続人がこの制度を利用していた場合、最寄りの法務局で自筆証書遺言の保管の事実の有無やその内容を確認することができます。
  3. 公正証書遺言の確認
    被相続人が公正証書遺言を作成していた場合、最寄りの公証役場で公正証書遺言の有無や保管先の公証役場を検索することができます。
  4. 弁護士や信託銀行の確認
    被相続人が弁護士や信託銀行に遺言書の保管を依頼している場合もあるため、これらの機関にも問い合わせておきましょう。
  5. 家族や近親者への確認
    生前に被相続人が遺言書について話していた可能性があるため、家族や親しい友人にも確認してみてください。

2 相続人の特定

相続人の特定は、相続登記において最も重要な手続きの一つです。

  1. 戸籍謄本の収集
    相続人を特定するため、被相続人の出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本を収集します。そのため、まずは被相続人の死亡時の本籍地を調べ、本籍地のある役所で被相続人の戸籍謄本を取得します。
  2. 相続人の範囲
    民法で法定相続人として定められているのは、被相続人の配偶者と血族です。配偶者がいる場合、配偶者は常に相続人となります。一方、被相続人の血族は、被相続人の子、被相続人の親または祖父母、被相続人の兄弟姉妹の順に法定相続人の地位を有します。
  3. 相続人の戸籍確認
    相続手続きでは、相続人全員の現在の戸籍謄本(抄本)が必要となります。以上により、相続人が確定します。

3 不動産の確認

相続登記の前に、被相続人が所有する不動産を正確に把握しておくことは、相続登記の再手続きや遺産分割協議のやり直しを防ぐために重要となります。

  1. 遺品や書類の確認
    不動産に関する書類(固定資産税の納税通知書、登記済証など)が遺品の中にあるかを確認します。これらの書類には、被相続人が所有する不動産についての詳細が記載されています。
  2. 名寄帳または固定資産税課税台帳の確認
    被相続人が所有する不動産が複数の市区町村に存在する場合、それぞれの役所で名寄帳または固定資産税課税台帳を取得し、不動産の詳細を確認します。
  3. 登記情報の確認
    法務局では各不動産につき登記簿を作成・保管しており、登記事項証明書を取得することで、不動産の権利関係や物理的状況を把握することができます。
  4. 金融機関や関連機関への確認
    被相続人が不動産を担保に融資を受けていた場合、その契約内容を金融機関に確認する必要があります。

4 不動産の分割方法の確定

不動産を含めた相続財産の分割方法については、以下の方法が挙げられます。

  1. 遺言書(自筆証書遺言または公正証書遺言)による分割
    被相続人が遺言書を残している場合は、その内容に沿って相続財産を分けます。
  2. 法定相続分による分割
    原則として、被相続人の相続財産は民法が定める法定相続分に従って法定相続人間で分割されます。被相続人に配偶者がいる場合、配偶者は法定相続分に従って被相続人の子供や親、兄弟姉妹と不動産の持分を分け合うことになります。
  3. 遺産分割協議による分割
    相続人全員で遺産分割協議を行い、被相続人の相続財産をどのように分けるかを決めることができます。協議が整った場合、遺産分割協議書を作成し、相続人全員の署名(又は記名)及び実印による押印を行います。

なお、不動産を複数の相続人で共有する場合、後に不動産を処分する際にトラブルが生じる恐れがあるため、遺産分割協議により1人の相続人に不動産を取得させる方法が推奨されます。

5 家庭裁判所における手続き

遺産分割について相続人間で合意が得られない場合、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立て、最終的に裁判所の判断を仰ぐことになります。

  1. 調停の申立て
    遺産分割方法について相続人間で意見が合わない場合や、相続人の一部が遺産分割協議に応じない場合などに利用することができます。
  2. 必要書類と申立先
    遺産分割調停には、相続人全員の戸籍謄本や住民票、財産目録などが必要です。申立先は、原則として相手方のうちの一人の住所地を管轄する家庭裁判所になります。
  3. 調停の流れ
    調停が始まると、裁判所の調停委員が相続人の間で話し合いを進めます。合意に達すれば調停調書が作成され、これに基づき相続登記が行われます。調停が不成立となった場合は、自動的に審判手続が開始され、裁判官が最終的に判断を下します。
  • まとめ
  • 相続登記を円滑に進めるためには、遺言書の有無、相続人の特定、不動産の確認など、事前にしっかりと準備することが重要です。また、相続人間で意見が合わない場合には、家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てることも検討しましょう。適切な手続きを進めることで、スムーズに相続登記を完了させることができます。