各書類の解説(自筆証書遺言とは)

自筆証書遺言

自筆証書遺言は、遺言者が自分で手書きで作成する遺言書の一つです。自分の意思を直接表現できる方法で、他の遺言書と比較して費用がかからず、手軽に作成できるため、利用者が多い形式です。しかし、その分注意が必要な点も多いので、以下に自筆証書遺言の特徴、作成方法、メリット・デメリットを詳しく説明します。

自筆証書遺言の特徴

遺言者が全て手書き

自筆証書遺言は、遺言者が自分で全文を手書きする必要があります。パソコンで作成したり、他の人が書いたものは無効とされます。

本人の署名押印・日付が必要

遺言書には必ず遺言者の署名押印と日付を記入しなければなりません。この署名押印と日付がないと無効とされます。

遺言内容の自由度

自筆証書遺言は遺言者が自由に内容を決めることができ、相続人や遺産の分割方法、遺言執行者の指定など、あらゆる内容を盛り込むことが可能です。

自筆証書遺言の作成手続き

自筆証書遺言を作成するためには、以下の手順を踏む必要があります。

(1) 遺言書を手書きする

  • 遺言書は遺言者が自分で手書きしなければなりません。内容は自由ですが、正確に記載することが求められます。
  • 例えば、遺産の分割方法、特定の財産の譲渡先、遺言執行者の指定など、細かく書き込む必要があります。

(2) 署名と日付を記入する

  • 署名(自筆のサイン)と押印、日付は必須です。これがないと、遺言書は無効となります。
  • 日付は遺言書を作成した日付を記入することが重要です。

(3) 封筒に入れて保管する

  • 自筆証書遺言は、作成した後の保管方法が重要です。封筒に入れて保管するのが一般的ですが、誰にも見られない場所に保存するようにしましょう。(封筒に入れて封をしていない自筆証書遺言も有効です。)
  • 重要な遺言書であるため、紛失しないよう注意が必要です。

(4) 証人や公証人は不要

  • 自筆証書遺言には証人や公証人の立会いは必要ありません。遺言者が全て自分で書き、署名することで遺言書が成立します。

自筆証書遺言のメリット

費用がかからない

自筆証書遺言は、自分で書けば費用はほとんどかかりません。公証人や証人を立ち合わせる必要もないため、非常に手軽に作成できます。

自由な内容記載

他の形式に比べて、遺言者が自由に内容を記入できるため、具体的で個別的な指示を遺言書に盛り込むことができます。

簡単に作成できる

作成の手続きが簡単で、誰でも比較的手軽に遺言書を残すことができます。

自筆証書遺言のデメリット

無効になる可能性がある

形式要件を満たさないと無効

自筆証書遺言は、遺言者の署名押印や日付がない場合、あるいは内容に誤りや不備がある場合、無効になる可能性があります。

法的な不備が生じやすい

正確な書き方や形式に注意しなければ、遺言として有効と判断されないことがあります。

家庭裁判所での検認が必要

自筆証書遺言は、遺言者が亡くなった後、家庭裁判所で「検認」手続きが必要になります。この検認手続きには基本的に2週間~1か月程度かかるため、遺言の効力が発生するまで時間がかかります。

紛失や破損のリスク

自筆証書遺言は遺言者が保管するため、紛失や破損、隠匿などのリスクがあります。例えば、家族が遺言書を見つけられず、遺言書の発見前に遺産分割が完了してしまった場合、遺言書に則らない形で相続が完了する場合があります。

遺言内容の証明が困難

自筆証書遺言には証人がいないため、遺言書の有効性を疑われた場合には証明が難しい場合があります。遺言書が本当に遺言者自身のものであるかを確認するために、裁判で筆跡鑑定などの証明が求められることがあります。

自筆証書遺言と公正証書遺言の比較

特徴 自筆証書遺言 公正証書遺言
作成方法 自分で手書き 公証人が作成
署名押印・日付 必要 必要
証人 不要 必要(証人2名以上)
検認 必要(家庭裁判所で検認) 不要
費用 ほとんどかからない 公証人手数料がかかる
信頼性 法的要件を満たさないと無効の可能性 高い(公証人が確認)
保管方法 遺言者自身で保管 公証役場が保管

自筆証書遺言を作成する際の注意点

正確に書く

文字や日付を間違えないように気をつけましょう。重要な記載内容に誤りがあると、無効となる場合があります。

署名押印と日付を必ず記入

署名押印や日付を忘れると遺言が無効になってしまいます。必ず自分の名前を署名し、作成した日付も記入するようにします。

遺言の保管場所に注意

自筆証書遺言は、紛失や改ざんのリスクがあるため、安全な場所に保管する必要があります。信頼できる人に預けるか、遺言書専用の保管場所を設けると良いでしょう。

  • まとめ
  • 自筆証書遺言は、低コストで手軽に作成できるため、特に簡単な遺産分割を望む方には有用です。しかし、法的な要件を満たさないと無効になるリスクがあるため注意して作成する必要があります。自筆証書遺言を作成する際は、内容もさることながら保管方法についても十分に検討しましょう。遺言により確実性を求める方は、公正証書遺言を作成したほうがよいでしょう。