遺言書がある場合の相続登記
相続が発生した際、まず行うべきことは遺言書の有無を確認することです。遺言書が存在する場合には、被相続人(亡くなった方)の意志を尊重し、その内容に従って遺産分割が行われます。一方、遺言書がない場合や内容に不足がある場合には、相続人同士で遺産分割協議を行い、分配方法を決める必要があります。
また、遺言書の種類や内容によって相続登記(不動産の名義変更)の手続きも異なります。以下では、遺言書がある場合の手続きの流れをわかりやすく解説します。
遺言書がある場合の相続登記の手続き
1. 遺言書の種類を確認
遺言書には、以下の3種類があります。それぞれ手続きの流れが異なるため、内容と形式を確認することが重要です。
- 公正証書遺言
公証人が作成した正式な遺言書で、家庭裁判所での手続きが不要です。そのまま利用できるため、最もスムーズに手続きが進められます。
- 自筆証書遺言
被相続人が自分で作成した遺言書です。2020年以降、法務局の保管制度を利用している場合は検認手続きが不要ですが、保管制度を利用していない場合は家庭裁判所で「検認」の手続きが必要です。
- 秘密証書遺言
遺言内容を秘密にする形式の遺言書です。こちらも家庭裁判所での検認が必要です。
2. 必要書類を準備
相続登記に必要な書類を揃えましょう。遺言書の種類によって追加書類が異なります。
共通で必要な書類
- 登記申請書
法務局のホームページからダウンロードできます。
- 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までの一連のもの)
相続人を特定するために必要です。
- 相続人全員の戸籍謄本
相続人であることを証明するために使用します。
- 被相続人の住民票除票または戸籍の附票
被相続人の最後の住所を確認するために必要です。
- 相続人の住民票
名義変更後の所有者を確認するために使用します。
- 不動産の固定資産評価証明書
登記費用を計算するために必要です。
- 代理権限証明情報(委任状)
司法書士などの代理人に登記申請を委任する場合に使用します。
遺言書がある場合の追加書類
- 遺言書
・公正証書遺言の場合はその正本または謄本を提出します。
・自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合は、家庭裁判所で検認を受けた後に発行される検認済証明書を添付します。
3. 法務局で手続き
必要書類が揃ったら、不動産が所在する地域を管轄する法務局で相続登記を申請します。
提出方法
書類は以下のいずれかの方法で提出可能です。
- 窓口で直接提出
- 郵送
- オンライン申請(専門知識が必要)
登記費用(登録免許税)
不動産の固定資産評価額をもとに計算されます。基本的には、固定資産評価額 × 0.4% です。
遺言書による相続登記の注意点
- 遺言書の内容を尊重する
遺言書に記載された内容は、基本的に相続人の意志に関係なくそのまま登記手続きに反映されます。
- 家庭裁判所での検認手続き
自筆証書遺言や秘密証書遺言は、相続登記を進める前に家庭裁判所で検認を受ける必要があります。
- 遺言書に不動産の分配が記載されていない場合
遺言書があっても不動産の具体的な分配方法が記載されていない場合は、相続人全員で話し合い(遺産分割協議)が必要になることがあります。
- 専門家への相談を推奨
遺言書の内容が複雑であったり、相続人間で意見の相違がある場合は、司法書士や弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。手続きのスムーズさだけでなく、将来のトラブル防止にも役立ちます。